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( 看護師 助産師 )

助産師が妊婦・産婦・褥婦の「出血」と聞いて疑うべき疾患と対応

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助産師が妊婦・産婦・褥婦の「出血」と聞いて疑うべき疾患

助産師は妊娠中の妊婦・分娩中の産婦・分娩後の褥婦から「出血」と聞いたら何を考えますか。「診察してみないと分からない」というのが正しい答えなのかも知れません。

でも、その前に助産師にできることはたくさんあります。それは、出血の時期に起こると考えられるリスクを予測することです。予測するには、頭の中の知識を整理することが必要です。

今のページでは、妊娠~出産にまつわる出血の知識をまとめてみました。皆さんの参考になれば嬉しいです。

1.妊婦の出血時、疑うべき疾患と対応

妊婦の出血時、疑うべき疾患と対応

妊娠中の出血によるリスクは、分かったつもりでも案外理解が曖昧になっていることがあります。

妊娠初期、妊娠中期・後期に分けて、妊婦から問い合わせが多いであると考えられる知識を中心に整理してみました。

 

妊娠初期の出血:不正出血

妊娠初期とは、15週までのことを指します。15週までの時期に出血を起こった妊婦は「不正出血」を疑いましょう。妊娠15週までの少量の出血は、約30%の妊婦が経験します。

絨毛と呼ばれる胎児側の細胞が、子宮内膜の血管を破綻させながら入り込み胎盤を完成させる過程で出血するため、直接出血が流産に結びつくことは稀だと言えますが、この時期の問い合わせとしとは1番多い出血です。

ポイント!

ポイント
不正出血と判断したら、なぜ出血が起こっているのか妊婦にきちんと説明してあげることで安心させることができます。

 

妊娠中期の出血:切迫流産

妊娠16~22週未満の出血は、切迫流産が疑われます。切迫流産は全妊娠の約15%の頻度で特別な理由なく流産が起きます。

原因の大部分は胎児側にあり、受精卵の異常によるものとされています。受精した時点で異常の有無が決まるため、流産の根本的治療はありません症状としては下腹痛・出血があります。

 

子宮頸管ポリープ・子宮腟部びらんの可能性もある

妊娠16~22週未満の出血の原因は、切迫流産だけではありません。子宮頸管ポリープ・子宮腟部びらんなども考えられます。

他にも、この時期注意が必要なこととして子宮外妊娠(異所性妊娠)があります。全く出血が伴わないこともありますが、妊娠初期から少量出血が持続することもあります。他の症状として、強弱の差はありますが多くは腹痛を伴います

妊娠初期の問い合わせの際には、下腹痛・少量出血と聞いて、すぐに切迫流産か不正出血かなと判断し安静にと返答するのではなく、子宮内に胎嚢が確認されているのか(本人が曖昧ならカルテで確認)確かめることが大切です。

ポイント!

ポイント

妊娠中期以降の出血の問い合わせでは、下記の切迫早産・前置胎盤・常位胎盤早期剥離の3つの疾患を念頭に対応することが必要です。

 

妊娠中期~後期の出血:切迫早産

妊娠22〜37週未満の子宮は筋肉であり、問題がなくても時々収縮を起こしています。早産の原因は特定できないことも多いですが、絨毛羊膜炎(CAM)の頻度が多いことが分かってきています。細菌感染により子宮内に炎症が起き、破水したり子宮収縮が起きたりします。

切迫早産の場合、助産師は妊婦の安静・子宮収縮抑制剤の投与・感染の疑いが強ければ抗生剤の投与を行います。

妊婦からの問い合わせとして多くは「お腹がよくはる、いつもより硬い」などの訴えです。出血や帯下の増加などが伴うこともあります。

補足説明!

補足事項

問い合わせ段階で子宮収縮は規則的に起きているのか、痛みを伴うのか、出血はどの程度かなど確認し、一旦安静かすぐ受診を勧めるべきか判断できる情報を得ることが大切です。

 

妊娠中期~後期の出血:前置胎盤

前置胎盤とは、胎盤の一部または大部分が通常より低く(子宮下部)に付着し、子宮の入り口(内子宮口)に及び蓋をしてしまっている疾患です。リスク因子は以下の通りです。

  • 経産婦
  • 帝王切開
  • 子宮筋腫
  • 流産などの子宮手術既往
  • 喫煙

症状は、無症状・切迫早産の徴候・出血であり、超音波検査で胎盤の位置を確認して診断します。子宮の増大とともに内子宮口から胎盤が移動していく場合があるため診断時期は慎重な判断が必要です。

前置胎盤と判断したら、助産師は、出血・切迫早産の徴候があれば入院・安静・子宮収縮抑制剤の投与をしてください。

前置胎盤になると、基本は予定帝王切開となり、症状や妊娠週数を考慮しながら時期を決めます。手術時の大量出血に備え、自己血貯血も行います。

 

合併症に注意!

癒着胎盤(胎盤が子宮と強固に癒着し胎盤の剥離が困難な疾患)が合併する場合、さらなる大量出血も考えられることも頭に入れておいてください

癒着胎盤の確定診断は分娩後になります。出血のリスクに加え、胎児への対応も必要となる場合が多く、小児科は勿論、人手もたくさん必要となるため総合病院での分娩となります。

前置胎盤疑いや前置胎盤と診断されている妊婦からの問い合わせには、少量の出血でも即入院となることを前提にした対応が必要です。

 

妊娠中期~後期の出血:常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは、正常位置(子宮体部)に付着している胎盤が妊娠中・分娩経過中の胎児娩出前に子宮壁から剥離する疾患です。母体の血液に凝固障害が起こり、重篤なリスクを伴います。リスク因子は主に以下の通りです。

  • 妊娠高血圧症候群
  • 前期破水
  • 感染
  • 機械的外力(外回転・打撲)
  • 喫煙

出血・腹部緊満・軽度〜高度まで様々な腹痛が起こります。常位胎盤早期剥離かどうかは、以下の表を見て診断してください。

血液検査 ・軽度の貧血
・凝固因子異常
(FDP10μg/dL以上、血小板10万/mm以下、フィブリノゲン150mg/dL以下)
超音波検査 ・胎盤後血腫
・胎盤辺縁の血腫
・胎盤肥厚
モニター ・頻回に繰り返す子宮収縮
・頻脈
・除脈
・基線細変動の消失(胎児機能不全)

常位胎盤早期剥離と診断した場合、迅速な胎児の娩出が必要です。輸液・輸血・DIC治療・止血困難な場合には子宮摘出・子宮動脈塞栓術を行います。

但し、胎児死亡が確認された場合は娩出方法は検討してください。

注意点!

注意点

臨床では頻回には遭遇しないかもしれませんが、何度かは経験することになると考えられるリスクが高い疾患です。輸血や手術が必要となることも多く、迅速な人手の招集が必要です。小さな施設では、人的・物理的に対応困難な場合も多く搬送することになります。

 

2.産婦の分娩時・分娩後の出血時、疑うべき疾患と対応

産婦の分娩時・分娩後の出血時、疑うべき疾患と対応

命の危機にさらされるような分娩時・分娩後の大量出血は300人に1人の頻度で起きています。今でも、妊産婦死亡率の1位は分娩時・分娩後の出血です。

これまでは、分娩時出血量500mL以上が異常出血量だと定義されていましたが、新たなガイドラインとして90パーセンタイルを目安にすることが提案されました。合わせて、出血量を推測できるショック・インデックスの指標を利用することが推奨されました。

分娩時出血量の9割が、単体・経膣分娩は800mLまで、帝王切開は1500mLまで、多胎・経膣分娩は1600mLまで、帝王切開は2300mLまでにおさまるという考え方です。

ショック・インデックス(SI)とは

妊娠8ヶ月で、循環血液量は非妊娠時の1.5倍となります。よって妊産褥婦の場合、出血量測定を行っても正確に循環血液量を反映しないこともあり、本当の出血量を知ることは困難です。

そこで、出血量の指標となるショック・インデックス(SI)=心拍数/収縮期血圧を算出します。妊婦の場合は、SI:1は約1500mL・SI:1.5は2500mLの出血量だと考えます。SI1.5で直ちに輸血開始との基準にもなります。

産婦が分娩時や分娩後に大量出血した場合、助産師が疑うべき疾患と正しい対応は以下の通りです。

 

分娩時:子宮頸管裂傷

子宮頸管裂傷とは、分娩時に起きる子宮口から子宮下部の下端に及ぶ裂傷です。ひどい時には子宮体下部、子宮動脈、腹膜まで裂傷が達する時もあります。

分娩前からの出血増加、胎児娩出直後からの鮮血がある場合が多いですが、少量出血の場合もあります。リスク因子は主に以下の通りです。

  • 急速な分娩進行
  • 吸引分娩
  • 巨大児

子宮頸管裂傷の症状が見られる産婦には、迅速な診断・縫合による止血・後腹膜や腹腔内の出血が疑われた場合は開腹手術を行ってください。

 

分娩時:膣・外陰血腫

膣・外陰血腫とは、分娩の急速な進行や過大な頭部の通過により膣壁が伸展不良で急激に伸展できず、血管が破綻し発生するために起こる疾患です。

外出血は少量でも、膣の奥で血腫が増大している場合もあり、気づいた時にはかなりの出血を伴いショックを起こす場合もあります。症状は以下の通りです。

  • 尋常ではない外陰部痛
  • 肛門痛
  • 膀胱刺激症状

産婦に膣・外陰血腫の症状がみられる場合は、血腫除去術(メスで切開し凝血塊を取り除く)・圧迫止血・ドレーン挿入により再度血腫形成を防ぐなどの処置を行う必要があります。

 

分娩時:羊水塞栓

羊水塞栓とは、羊水成分(羊水や胎児のうぶ毛や皮膚の細胞など)が母体の血管内に入り込み、急速に呼吸不全を引き起こす予後不良の疾患です。原因は、羊水が詰まって起こるのではなく、羊水と血液がアレルギー反応を起こしていると考えられています。

羊水塞栓の症状は以下の通りです。

  • 急激な血圧低下
  • 心停止
  • 急激な呼吸困難
  • 胸痛
  • 産科DIC(サラサラした出血)
  • 原因不明の大出血

これらの症状があらわれ、羊水塞栓が疑われた場合、助産師は呼吸困難となるため酸素投与・DIC治療・輸液・循環改善に努めてください。

補足説明!

補足事項
羊水塞栓は予知不能とされ、極めて予後不良、救命できない頻度が最も高い疾患とされています。

 

分娩後:弛緩出血

通常の分娩では、分娩終了とともに空っぽになった子宮は一気に収縮を開始します。子宮筋の収縮は、胎盤剥離面にむき出しになった血管も締め付け、亢進した凝固作用も加わり出血を抑制します。

弛緩出血を起こしている産婦は、子宮筋の収縮が不良だと血管が開口したままになり、胎盤剥離面から大量に出血します。子宮が弛緩しないことで起こる血管の障害です。

リスク因子は主に以下の通りです。

  • 微弱陣痛
  • 遷延分娩
  • 巨大児
  • 多胎妊娠
  • 羊水過多
  • 子宮筋腫合併妊娠
  • 母体疲労
  • 膀胱充満

弛緩出血が起こったら、まず子宮収縮を促し、子宮底マッサージ・アイスノンによる冷却・子宮収縮剤の投与と輸液・輸血・双手圧迫・子宮内ガーゼ挿入・導尿、止血困難な場合最悪子宮摘出をしてください。

助産師が分娩後臨床で出会うことが1番多い出血ですが、ある程度予測ができます。分娩前からリスク因子がないか意識しながら分娩介助にあたり、リスクが高ければ普段以上の事前準備が重要です。

ポイント!

ポイント
対応の迅速さが(一定の量を超えると血液が薄くなり止血しにくくなる)出血量に大きく影響する疾患ともいえます。

 

3.褥婦の産後の出血時、疑うべき疾患と対応

褥婦の産後の出血時、疑うべき疾患と対応

出産を終えた褥婦が出血した場合、助産師はまず「子宮復古不全」を疑ってください

子宮復古不全とは、通常であれば、分娩後から徐々に子宮は妊娠前の状態に戻ろうと収縮しはじめますが、収縮が正常に行われず子宮の回復が遅れてしまう状態です。

原因としては、悪露が排出されず滞留していたり、胎盤や卵膜の一部が残っていたりすることが考えられます。

 

産後:子宮復古不全

子宮復古不全の症状は、以下の通りです。

  • 悪露が減らない
  • いつまでたっても血性である
  • 悪露から悪臭がする
  • 発熱がある

このような症状が見られた場合は、子宮収縮剤の投与・感染が疑われれば抗生剤投与・必要ならば子宮内容除去術を行う必要があります。

退院してからの不測の出血は、褥婦にとってびっくりする事態です。問い合わせがあった場合には、出血量や臭いなどの状態を聞き、一旦様子を見るのか受診が必要なのか判断できる情報収集に努めます。

緊急事態でなければ、積極的な産褥体操・排尿を我慢しない・積極的な授乳などで子宮収縮が促進されることをアドバイスします。

 

4.まとめ

まとめ

今回は、妊娠中の出血と聞いて何を考えなければいけないか各時期に分けて整理してみました。しかし、どんなに知識を持っていても、周産期の出血はいつ・どこで・誰に発生するか予測不可能といえることも忘れてはいけません。

いざという時には、限られた資源や人手の中で、処置や輸血といった対応に迫られることも事実です。例え、緊急自体でなくても、妊産褥婦さんにとっては出血があるとそれだけで不安になります。

私たちにできることは、正しい知識を身につけ学び続けることです。それがいざという時にきっと役立ちます。

 

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カテゴリー:助産師の看護知識




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執筆者:Jun By「看護師疾患ジョブ」(公開日:

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